迷子の眠り姫〜sweet kiss〜*下*
「みさきちゃんのご両親、2人とも迎えに来られないみたいなのよ。」
みさきが目覚めて。
点滴も終わって。
処方せんとか会計とか…いろんな手続きも済んで。
いざ帰ろう、となったとき。
母さんが困ったように俺に言った。
「…って言うか、
みさきちゃんが“連絡しないでほしい”って。」
2人とも仕事中だから。
迷惑も心配もかけたくないのだ、と。
……みさきらしい。
「さすがにマドカちゃんに来てもらうわけにはいかないしねぇ」
母さんはどこまで知ってるんだろう?
みさきの家庭事情、を。
マドカの母親とは、再会して以来連絡を取り合ってるみたいだけど…
「だから、送ってあげて?」
「…はっ?」
「タクシー呼んだから。
あんたがみさきちゃんの家までついて行ってあげなさい。」
ぼんやりと考えていた俺に、母さんの突然の提案。
「俺が…?」
だって、俺は…
普通なら二つ返事で引き受けるところだけど、さすがに今は…
こんな状況なのに?
「いいわね?」