迷子の眠り姫〜sweet kiss〜*下*
有無を言わせぬ迫力に逆らえるはずもなく――
俺は今、
みさきと並んでタクシーに乗っている。
微妙な距離。
人、1人分くらいの間隔をあけて、隣に座るみさきを見れば…
「………。」
ぼんやりと。
ドアのほうに寄りかかるようにして、窓の外を眺めている。
会話はない。
視線すら合わない。
この状況をみさきはどう思っているんだろう……?
やっぱり“今さら”で。
迷惑以外の何でもない…のかな?
そもそも、俺の顔なんて見たくなかったんじゃ…?
いろんな考えを巡らせている間にも、
タクシーはどんどん走り続けて。
気がつけば、見慣れた路地に……え?
「…違う。すいません、こっちじゃなくて…」
すぐに気づいた俺は、戻ってもらうべく、慌てて身を乗り出した…のに。
「えっ…?」
がしっと。
横から掴まれた腕。
引き戻されるように、その反動で後ろに座り込んだ俺。
「何でもないです。このまま、お願いします。」
運転手のおじさんに向かって、まっすぐに響く声。
……なんで?
タクシーが
たどり着いたのは……