迷子の眠り姫〜sweet kiss〜*下*
………はっ?
ここまで来て、今さら何を…?
って言うか…
「……っ!」
みさきがまっすぐに俺を見ていた。
その瞳には、しっかりと俺が映っている。
俺だけ、が。
久しぶり、だった。
さっき――
病室でキスしたときは、
俺はみさきと目を合わせていないから。
合わせられなかったんだ。
みさきが目を開けて。
その視界に入る前に。
俺は急いで顔をそらしたから。
だから…
「………っ。」
俺を見上げる瞳。
それを見ただけなのに…
ドクドクと。
高鳴る鼓動。
微かな震えと。
じんわりと滲む汗。
俺の心はこんなにも反応してしまう。
それほど
俺は、みさきのことが好きなんだ―――
「入って。」
「え…」
「こんなとこに突っ立ったままじゃ、体に障るから。」
これ以上は危険だ。
このままじゃ俺は…
まだ何も解決してないのに。
みさきの気持ちもわからないのに…
思わず伸びそうになった手をなんとか押し止めて。
俺はみさきに背を向けて、家の中へと踏み出した。
「おじゃま…します。」