迷子の眠り姫〜sweet kiss〜*下*
……この5年間、
彼女は航と、どんなふうに過ごしてきたんだろう?
一体、何をどうしたら、
彼女をこんなふうに変えることができるんだろう?
目の前で柔らかく微笑む彼女は、あの頃とはまるで別人だ。
よくしゃべるし、表情も変化する。
だけどそれは、航の話が出たときだけ。
本人はきっと無意識で。
普段もこんな感じなんだろう。
この前の、母さんの言葉を思い出す。
「“航が大好き”っていうのが全身に表れてる」
まさに、その通りだ。
「…あ。ごめんなさい。」
黙りこむ俺を見て、どういうふうに解釈したのかはわからないけど、
「夕飯、作りますね。」
彼女は、手元の材料に向き直った。
再び、静寂が訪れる。
……なんか、気まずい。
母さんは、まだ出てこないんだろうか?
テレビとか、付けさせてもらったほうがいいのかな?
そう言えば……
「航は?」