迷子の眠り姫〜sweet kiss〜*下*
「…よく来てくれましたね。」
――春。
窓の外には満開の桜。
射し込む光は柔らかく。
空気もなんとなく澄んでいる気がする。
そんな中…
「君とまた、こういう形で再会できて、私は本当に嬉しいです。」
にこにこと。
穏やかな笑みを浮かべる“先生”。
実際に会うのは久しぶりだけど、
人を包み込むような、やさしいオーラは相変わらずだ。
一緒にいるだけで安心するような…
あのとき、俺はこれに救われたんだ。
「……っ。」
いろんな想いが込み上げてきて、胸が詰まりそうになったけど…
今はそんな場合じゃない。
まずは挨拶だ。
「至らぬ点ばかりですが、ご指導の程よろしくお願いします!」
俺は深々と頭を下げた。
……ものの。
「おやおや。そんなに改まらなくていいですよ。」
すぐに制されてしまった。
「でも…」
「ほら。リラックスして。
私と話すときは肩の力を抜くこと!…でしたよね?櫂くん?」