迷子の眠り姫〜sweet kiss〜*下*



俺を助けてくれた“先生”が、

大学に戻って研究室を構えた、と知ったのは半年前。


もともと、その道では権威のある人だったから。


クリニックでの診療の他にも、講演会やらセミナーやらを開催していることは知っていた。


でも、本格的に学生の指導に入るのは初めてで…


それを知って、俺は居ても経ってもいられなくなってしまったんだ。


受けたい。

先生の下で学びたい。


強く想った結果―――








「……では。来週から、一緒に頑張って行きましょう。」


「ハイ!よろしくお願いします。」


「わからないことがあったら、遠慮せずに聞いてくださいね。勉強のことに限らず、この街のこととか生活のこととか…」


「ありがとうございます。」



先生のやさしさに感謝して。

そして、

これからお世話になるという意味も込めて。



俺は、再び、

大きく一礼してから、研究室を出た。


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