迷子の眠り姫〜sweet kiss〜*下*
「…え?」
渡されたのは、一冊の本。
これは…?
「渡してくれって。」
ようやく息が整ってきたのか、
その人は、俯いていた顔を上げながら言った。
うわっ…
遠目からじゃわかんなかったけど、かなりの美人だ。
綺麗に巻かれた髪は、走ってきたせいで多少の乱れはあるものの、
服装も。
メイクも。
まるでファッション誌から抜け出したような…
“完璧な”美人。
どちらかと言うと、俺が苦手とするタイプ…
派手と言うか…なんか、近寄り難い感じで。
そもそも、誰?
「おじいちゃんが、さっき渡すの忘れたんだって。」
“おじいちゃん”?
俺の戸惑いなど気にもせず、その人は本を俺の手に握らせた。
見れば、心理学関連の本だけど…
「ほら、おじいちゃんも年でしょ?最近めっきり忘れっぽくなって。」
困っちゃうわよねぇ、なんて。
無邪気に笑ってるけど…
「よかったよね。私がたまたま研究室に立ち寄って」