迷子の眠り姫〜sweet kiss〜*下*



「ごめん、ごめん。すっかり忘れてた。」



……え?


俺の言葉に気分を害するどころか、

えへ、って感じに、なぜか明るく笑ってるんだけど…何?



「ごめんね?話にはよく聞いてたもんだから、もう知り合いのつもりでいた。」


「え…?」


「そうだよね。キミは私のこと知らないよね?」



この人は、何を言って…



「私、三枝依子(サエグサヨリコ)。」



今度はいきなり自己紹介?


掴めない人だなぁ…って、待って。

“三枝”って…まさか?



「そう。その“まさか”」



俺の表情に気づいたのか、にっと、楽しそうに微笑む彼女。



「三枝正造は、私の祖父。
孫からしたら、“おじいちゃん”でしょ?」



えぇっ?


三枝正造=先生で。


まさか、先生にこんな大きなお孫さんがいたなんて…

あー、でも、年齢的にはおかしくないのかな?


うわぁ…



「安心して。」


「へっ?」


「キミの“尊敬する”先生をおじいちゃん呼ばわりするのは、この学校では私だけだから」


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