迷子の眠り姫〜sweet kiss〜*下*
…なんて鋭いんだろう?
一瞬だけ。
ほんの一瞬よぎっただけだなのに…
先生の研究室は、ものすごく人気があるから。
心理学を学ぶ者なら誰もが一度は体験したいと願う、少数精鋭の指導。
俺だって、寝ないで勉強して努力して…試験をパスしたんだ。
だから…
「言っとくけど、私はこれでも優秀な成績で大学を卒業したんだよ?」
ちょっとムッとした顔で続ける。
「留学もしたし、論文で賞も取ったし…甘く見てもらっちゃ困るんだから。」
「…すみません。」
「わかればいいの。」
またしても、俺の表情を見て判断したらしい。
……すごくやりにくい。
「まぁ、専攻は同じだから。これからどうぞよろしくね?」
にっこりと手を差し出されて、
思わず握手なんかしちゃったけど…
外見だけじゃなくて、
中身もとっても苦手。
たぶん、俺とは違いすぎるからだと思うんだけど……
「成海くんって、下の名前なんだっけ?」
「櫂、ですけど…」
「じゃあ、櫂くんでいいよね?」