迷子の眠り姫〜sweet kiss〜*下*


…なんて鋭いんだろう?



一瞬だけ。
ほんの一瞬よぎっただけだなのに…



先生の研究室は、ものすごく人気があるから。

心理学を学ぶ者なら誰もが一度は体験したいと願う、少数精鋭の指導。


俺だって、寝ないで勉強して努力して…試験をパスしたんだ。


だから…



「言っとくけど、私はこれでも優秀な成績で大学を卒業したんだよ?」



ちょっとムッとした顔で続ける。



「留学もしたし、論文で賞も取ったし…甘く見てもらっちゃ困るんだから。」


「…すみません。」


「わかればいいの。」



またしても、俺の表情を見て判断したらしい。


……すごくやりにくい。



「まぁ、専攻は同じだから。これからどうぞよろしくね?」



にっこりと手を差し出されて、

思わず握手なんかしちゃったけど…



外見だけじゃなくて、

中身もとっても苦手。



たぶん、俺とは違いすぎるからだと思うんだけど……




「成海くんって、下の名前なんだっけ?」


「櫂、ですけど…」


「じゃあ、櫂くんでいいよね?」



< 314 / 334 >

この作品をシェア

pagetop