迷子の眠り姫〜sweet kiss〜*下*
ここは、みさきちゃんのマンション。
正確には、みさきちゃんが“家族”と暮らすお家、だけどね。
大学2年生のとき、みさきちゃんは家を出て。
大学を卒業した1年後には、そのままお嫁に来ちゃったから。
私は、もうずっとみさきちゃんとは暮らしていない。
こうやって、たまに遊びに来たりはするけど…
やっぱり、なんとなく気まずくて。
最近では“就活”が忙しいことにかこつけて、ほとんど会いに来ることもなかった。
なんて言うのかな…?
みさきちゃんには、もう“家族”がいるから。
私は、もう“家族”にはなれないから。
それを認めたくなくて、見たくなかったんだと思う。
なんて独占欲。
“姉離れ”できてなかったんだよなぁ…
でも、
みさきちゃんがこんなに大変なこと(?)になってるなら、もっと早くに来ればよかった。
そしたら、身の回りのお手伝いができたのに…
……よし。
これからは産まれるまで、毎日来よう。
そして、絶対に“立ち会おう”。
たとえ“パパ”が間に合わなくても、“おばちゃん”がいるからね!
思いながら、食器を並べていると…
「ただいまーっ」
“パパ”が帰って来た。