迷子の眠り姫〜sweet kiss〜*下*



――――……

―――――――……



「…なんで、いるの?」



アパートに戻って、玄関を開けて愕然。


見慣れた靴と、付けたはずのない灯り。

極めつけは…



「あっ、おかえりー!」



“たった今”バスルームから出てきた、湯気ほやほやのこの男!


また勝手に…


帰ってきてよかったよ、ホント。




あの後、

しきりに泊まっていくよう勧めるみさきちゃんを断って…いや、振り切って帰って来た私。


久しぶりに“姉妹で”語り合いたい。

そんな想いを押し切って帰って来たのは、やっぱり“あの話題”から逃げたかったからで。

なるべくコウちゃんとも接触しないよう、車での送りも断ったほど。


それもこれも…



「なんで、いるの?」



目の前の諸悪の原因に問い掛ければ、



「ん?金曜日だから…?」



またもや勝手に、冷蔵庫から“私の”お茶を手に無邪気に答える。



「金曜って…先週も、先々週も来てないけど?」



って言うか、こうして会うのも半月ぶりくらいなんだけど?

怒りを込めて言ってるのに…



「そうだっけ?」



まったく悪びれる様子もない。


んもうっ!




「そういうの、すごく困るの!いい加減にしてよ…」



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