迷子の眠り姫〜sweet kiss〜*下*
「…え?何?なんで怒ってんの?」
「別に…」
「………?」
全然、わかってないもんなぁ。
まったく、これだから…
でも、ここで怒っても仕方ない。
それはよーくわかってるから。
素知らぬフリで、私は着ていたジャケットをハンガーにかけた。
うん、私ってば“大人”になったなぁ。
「そう言えば…どこ行ってたの?」
「へっ?」
「週末に…マドカがこんな時間まで出かけてるなんて珍しくない?」
タオルで髪をガシガシ拭きながら、無邪気に聞いてくる“彼”。
…絶対に気づいてないよね?
週末は、
“いつ連絡が来てもいいように予定をあけてる”
なんて、さ。
だから、怒ってるんだよ?
そんな期待もむなしく、
もうずっと、ほったらかしにされてたんだからね?
「コウちゃん家。」
「え?」
「コウちゃん家に行って、みさきちゃんの美味しい“手料理”食べてきたの。あー、楽しかった!」
悔しいから、強調してみた。
だって…
「うっわー、ズルイ!
みさき先輩の“手料理”なんて…なんで誘ってくれないんだよ?」
“彼”は、みさきちゃんの“ファン”なんだもん。