迷子の眠り姫〜sweet kiss〜*下*
当たり前のことなのに。
俺はなんで、いちいち落ち込んでいるんだろう?
わかっていたことじゃないか。
彼女はもう、あのときとは違う。
今の彼女を支えているのは、航で
彼女を一番わかっているのも航だ。
彼女の瞳には、航しか映っていないし
彼女の心には、航しかいない。
彼女は、航のもの―――
わかってるのに……
まだ、心のどこかで期待してしまう自分がいる。
あのとき共有した時間を
彼女が今も、大事に思ってくれてるんじゃないか
……なんて、さ。
「……っ」
風呂から上がって、
それを伝えるべくリビングに戻った……いや、
リビングのドアに手をかけた俺は、そのまま動けなくなってしまった。
だって……
「勘弁…してくれよ。」
どこまで追い討ちをかければ気がすむんだ?