迷子の眠り姫〜sweet kiss〜*下*



「元気に…やってるか?
もうだいぶ会ってないからなぁ…」



父さんは悲しげに呟いた。



「最後に会ったのは、航が中学生のときだから……
今会ってもわからないかもな。ハハッ」



明るい調子で笑ってるけど…無理をしているのはバレバレだ。



「あの子も、来年卒業だろう?大学は?もう決めたのか?もし、費用の心配があるなら……」



普段は無口な人なのに。

航のことになると、いつもこうだ。



「お前から、さりげなく聞いてみてくれないか?
母さんは、そういうことは一切私に言わないから……」



母さんは、航の“養育費”を一切もらっていない。

離婚するときに、
あの人がそういう条件を出した…から。


だから、こっそり。

父さんはこうやって、あの人に隠れて援助してきた。

よっぽどのことがない限り、母さんは受け取らなかったらしいけど……



「航が会いたいと言わない限り、私から会いに行くことはできないからな…」



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