迷子の眠り姫〜sweet kiss〜*下*
暴力だとか、
食事を与えない、だとか
そういうことはなかった。
でも、
明らかに、俺と航の扱いは違っていて、
航と母さんの扱いは同じだった。
本当ならば、
“孫”として愛情を与えられるはずなのに、
向けられるのは、
大人と同じ敵意や憎悪。
甘えたくても甘えられない。
ワガママは許されない。
欲しいものも
やりたいことも
自由に発言することすらできない。
話を聞いてもらえない。
存在を認めてすらもらえない。
どれだけ辛かっただろう?
だから―――
母さんが航を守ろうとするのは当然だった。
航は、この家に“居場所”がなかったから。
作ってやらなければいけなかったから。
あの人に必要とされていた俺は、ここで生きて行くことができるけど、
航は、ここじゃ生きられないから。
こうして、
家族はバラバラになったんだ。
あの人のせい、で。