迷子の眠り姫〜sweet kiss〜*下*
「一体、何がしたいの?」
ふいに聞こえてきた言葉。
冷たくて。低くて。
感情が見えない。
それは確実に、俺に向けられたもの。
「……え?」
その意味がわからなくて、思わず航を見れば……
「ここで、何がしたいの?」
俺をまっすぐに捉えて、
俺に問いかけていて。
なのに、その瞳に色はない。
「“親孝行”?“家族ごっこ”?この機会に、なくした時間を取り戻そう、ってやつ?」
フッと、鼻で笑う航。
バカにしたような、見下したような笑み。
普段のコイツからは、考えられないような表情、だ。
「さすが。成海サン家の自慢の“ひとり息子”は、違うよね。
母さん、大喜びだもん。
父さんも、でしょ?」
「俺は……」
「“やさしい”アンタが、“両親のため”って言うなら仕方ないけど……」
俺に口を挟む暇を与えることなく、航は続ける。
「アンタは、
どれだけ手に入れれば、気が済むわけ?」