迷子の眠り姫〜sweet kiss〜*下*
「なんで?なんで僕はダメなの?」
それは、何度目かの説得だった。
どうしてもやりたくて。
ダメだと言われても諦めきれなくて。
何度も何度も。
俺はお願いし続けた。
その度に、母さんはきちんと理由を説明してくれていたけど…
「……お兄ちゃんはやってるのに。」
それは決して、納得がいくものではなかったんだ。
「どうしてお兄ちゃんはよくて、僕はダメなの?」
「航…」
「みんな言ってたよ?
一緒にやればいいのに、って」
「……。」
「僕、新しいのはいらないから。全部、お兄ちゃんのお下がりでいいよ?
だから…「航!」
そこまで言ったところで、母さんは声を荒げた。
突然のことに、俺はびくっとして言葉を失って。
それに気づいた母さんは、ハッとしたような表情になった。
そして、
「ごめんね?航。」
やさしく、でも明らかに哀しげに。
俺の目線に合わせてかがみ込んで言った。
「航は、お兄ちゃんと同じことはできないの。」