迷子の眠り姫〜sweet kiss〜*下*
…我ながら、無茶苦茶だなぁと思う。
でも、引き下がるつもりはない。
こんなチャンス、滅多にないからね。
「ほら…」
固まったまま動かないみさきの顔を引き寄せながら、ゆっくりと目を閉じる。
落ちてくる長い髪は、まだ乾ききっていなくて。
近づいてくる甘い香りは、いつもよりも強い。
…そっか。
みさきは“お風呂上がり”だったんだっけ。
今さらながら気がついた。
だから、
俺はここで待ってたんだ。
俺がリビングにいれば、
絶対に近づいてこないから。
風呂から出てきたみさきと接触することはない。
“万が一”を考えて。
俺はここで見張っていた…はずだったのに……
寝ちゃうなんて、とんだ失態だよ。
……何もなくてよかった。
「こ…航くん?」
ほっと安心したところで、小さく聞こえてきた声。
「む…無理、だよ。」