迷子の眠り姫〜sweet kiss〜*下*
「別に…たまたまだよ。」
悟から用紙を取り返して、俺はもう一度眺めた。
「この前は“B”だったし?」
それは、ついさっき返されたばかりの模試の結果表。
今日は、そのために学校に来た。
受け終えてすぐに自己採点は済んでるから。
必然的に、点数よりも記入した志望校の判定のほうが気になるわけだけど…
「お前…それは俺に対する嫌味か?」
黙ってそれを鞄にしまう俺を見ながら、再び声を上げる悟。
相変わらずバカでかい声。
…暑苦しい奴だ。
「“あの”M大だぞ?
B判定で十分、合格ラインだって!」
「そう?」
「つーか、お前の成績なら推薦狙えるだろ?…先輩みたいに。」
……いやいや。
まだまだ、だ。
今回は、たまたま得意なとこが出ただけ。
油断してはいられない。
まだ“確実”じゃないから。
「もしかして…」
何かに気づいたように、じーっと俺を見つめる悟。
「お前、また推薦は受けないつもりなのか?…中学のときみたいに」