迷子の眠り姫〜sweet kiss〜*下*




――高校受験のとき。


俺は志望校選びに苦労はしなかった。



なるべく、母さんに負担がかからないように。

塾や家庭教師に頼らなくてもいいように。

入学したときから、頑張って成績をキープしていたから。


自慢じゃないけど、
先生たちには“どこにでも行ける”と太鼓判を押されていたくらいだ。



だから、

この高校に決めたとき、
“推薦”の話はすぐに出てきた。


今までの成績表と、
簡単な試験と面接。

それだけで、確実に受かるから。


先生たちには、強く勧められたけど……



俺はそれを断った。



“一般入試”を受けて、
“トップで”合格したかったから。





そうすれば、

入学式で、
全校生徒の前で“代表挨拶”ができる。



俺には、その“特権”が必要だった。



なるべく目立って。

存在を知ってもらって。

すぐに噂になる必要があった。








彼女の隣にいても


誰にも文句を言われないように――



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