迷子の眠り姫〜sweet kiss〜*下*
ゆっくりと開いた瞼。
まだ完全には目覚めていない。…と言うより、
夢と現実半分半分と言ったところかな。
でも、
その瞳には俺だけしか映っていない。
「ここじゃなくて、部屋で寝よう?」
抱き上げようと、背中に腕を回せば、
「…うん。」
当たり前みたいに、
みさきは抱きついてきて。
ぎゅっと。
俺の首元に顔を埋めて、
そのまま落ち着いてしまった。
「……っ」
後ろにいるアイツが、息を飲んだのがわかった。
そりゃそうだろうな。
普段のみさきからは考えられないだろうから。
子供みたいに無防備に、
誰かに甘えるしぐさ。
こんな姿は、俺にしか見せたことはないんだから。
…あ。みさきが言ってた“甘えてる”ってこういうことなのかな?
ぼんやり考えながらも、
その華奢な身体を抱え上げて。
俺はくるっと振り返った。
そして、
「こういうこと、だから。」
「…え?」
「見ての通り、みさきは俺のなの。だから…」
まっすぐに、その困惑したままの瞳を捉えて、
「欲しがらないでくれるかな?」
思いっきり睨み付けた。