迷子の眠り姫〜sweet kiss〜*下*
「私、先輩とはもう顔を合わせられない。」
小さく呟きながら、俺の胸に顔を埋めて、ぎゅうっと服を握りしめるみさき。
恨みがましく言われてしまったものの…俺としては、そのほうがありがたい。
アイツと同じ空間にいる、ってだけでも気が気じゃないから。
必要以上に近づかないでほしいし、話さないでほしい。
見ないでほしいし、見せないでほしい。
だって…
「だから…今日は帰る。」
「…へっ?」
「しばらく、泊まるのもやめにする。」
ぼーっとしていた俺に、予期せぬ言葉。
「なんでっ?」
「なんで、って…」
ゆっくりと身体を離して、俺を見上げて。
むっとした表情で、みさきは続ける。
「当たり前でしょ?
私、これ以上恥ずかしい思いしたくないもん」
「そんな…」
「先輩がいるときは、何もしない。」
きっぱりと言って。
わかった?と言うように、念を押して。
みさきは、自分の荷物のほうへと戻っていった。
…だから、朝からガサガサやってたのか。