1分と31秒のとびら。
「ひより、手かして?」



手?フェンスのすき間から手入れろってこと?



「こう?」



少しだけ、遠慮がちに差し入れた手をぐいっと引っ張られて、その手に由紀が顔を近づける。

髪の毛から水が滴り落ちて、私の手を濡らす。


由紀は、これは大げさな表現なんかじゃなく、王子様みたいに私の手の甲にキスをした。



私は驚きすぎて声が出せなくて、ひんやりした水の感覚と柔らかくて温かい唇の感覚だけが頭の中に広がる。




「ひより、続きは帰ってから」



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