少数派の宴
*
<煙草屋>は急に煙草を揉み消すと、<トカゲ>から携帯電話を取り、
「それは客か?」
と聞いた。
それが先程の出来事。

<トカゲ>は彼らを救えたのか半信半疑のまま、外を見るともなしに見ていた。

「ななみ、って霊か何かだろ」
そういえば、と聞く。
「霊? 生者が死者に干渉出来ないのに、逆が有り得るか?」

じゃあ『ななみ』は何だ。
続けて聞くと、<煙草屋>は哀れむような目で<トカゲ>を見た。

「生者」
それだけ言う。

「つまり生霊って事だろ」
「念か気か怨恨と言え」
「あーはいはい。で、ななみの念は消えたのか」
その問いに、<煙草屋>は口の端を歪めた。

「大部分は。そのうち残りに引っ張られて会うだろうが」
<トカゲ>は思い切り眉をしかめた。
「会いたくはないな」
「精々楽しみにしてろ」


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