少数派の宴

――――ピリリリリ

携帯の着信音が助手席で鳴り響いた。
しかし、<煙草屋>はそれを取ることなく無表情に眺める。

「……、まだまだ」
そしてそう呟くと、先へと車を進めた。

彼の行く先は、皆に忘れられたような、否、未だ知られていないような村である。
ほとんど人が通る事などないのだろう、村へ続く道は獣道しかなかった。
<煙草屋>はそこを無理矢理車で進んでいるので、もう自然破壊もいいところである。

突然、ふつり、と着信音が途切れた。
視線を移すと、圏外の2文字が見える。
<煙草屋>は眉をしかめ、携帯を静かに見据えた。
とたん、


携帯がまた、鳴った。


<煙草屋>は皮肉気に笑うと、あり得ない着信音をBGMにアクセルを踏み込んだ。

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