月の下の砂漠の上で
「歌ってあげるし踊ってあげる。でも、歌える 歌もないし舞なんて踊れない」
歌も舞もできないと自分で言っているのに もう開き直り堂々としている女。
「お前の言う世界が本当にあったならその国の 国歌でも歌えばいいだろう。舞は先程芸者が踊 ってたのを似せればいい。」
別の世界なんてあるわけけない。
所詮は作り話なんだと醜態をさらして【せいぜい恥をかけばいい】
でも舞台へのぼった あの女の瞳に もう迷いはなかった。
透き通った綺麗な声が宴の間に響き渡る。
今まで聞いたこともない音調
不覚にも耳から体へと浸透してくる この声が心地がいいと思ってしまった。
女が歌い終わってみれば、拍手喝采が湧く。
こんなの予想してなかった…っ
…いや、でもまだ舞が残っている
「楽器の準備を。まだ舞が終わっていない」
舞いなんかあの女に踊れるわけがない
そうだ、だってアイツの顔は戸惑っている