月の下の砂漠の上で
Side 美月



トントン

ノックをしてライルの部屋に入る


「ライル用ってなに?」

「美月にまた これが来た」

近くに寄って受けとれば、最近よく目にする手紙の様なもの

「…毎回 思うんだけど、コレ本当に私に?」

「あぁ」

あの宴の日から婚約の申込みが絶えない私。たぶん 人生で最初で最後のモテ期に差し掛かっている。

ライルにはモトの世界に帰るし全て断ってほしいとお願いしていたけど、日本では全くモテなかった私がこの世界でモテるなんて複雑。


「近々、また宴があるときは お前に余興をしてもらいたいとたくさんの者から頼まれた」

「…え 」

それは困る

「いったいどんな芸を披露したら世の人がこんなにまでお前に執着するんだ?」

どんな芸って…

ティマに強制されて歌も躍りも取り繕うのに必死だっただけで、あんまり良い芸をした記憶はない。

でも あの舞を踊っているときは楽しかった

「…うーん、私は歌って舞っただけだよ」

「それをもう一度やってくれないか?」

「っ無理無理!」

「皆の前でなく俺の前で」

どっちにしたって無理な気がする。だってアレはある意味やけくそで、そんなものをもう一度 誰かになんて見せられない。
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