月の下の砂漠の上で

そう言った瞬間


暖かいものに包まれる


気づけばライルの腕の中にいた









今… 抱き締められてる?




「っラ、ライル…?」



「…何だ」



いやいや、何だじゃないでしょ…


まだ抱き締められていたけど


それ以上 何も言わなかった




ううん…言いたくなかった




とくん とくん


ほらまた心臓が早くなる


聞こえちゃうかもしれないのに…



「…お前は 本当に変わっているな」


小さいけど 優しく響いたライルの声


何て返せばいいのかわからない


「美月、お前がいい」

「ん?」

「誰かと一緒に月をみるんだろ?」

「…うん」

「一緒に月をみるのならお前がいい」


《うん》と言いそうになるのを堪える。


危ない、危ない


私は日本に帰るんだから そんな約束はできないし。中途半端なことは、したくない。


「ライル、私はっ…」


「いや、やはり今 言ったことは忘れてくれ」


「…うん」



なぜ急に忘れてくれなんて言ったの?


言いかけた言葉は、口に出せなかった。ライルの目が苦しそうに私を捉えていたから



ライルの体が離れる、二人の間に風が吹いた。


冷たい風。やっぱりムーンディサートの夜は寒くて まだ慣れない


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