図書室の天使。
廊下をズカズカと進んでいく私達を
生徒は勿論のこと、
先生達までもが目を丸くして見てる。
そりゃ目立たない私が
人気者の片桐くんと歩いてたら驚くよね…。
「か、片桐くん…っ」
ちょうど玄関を出たところで片桐くんを引き止めた。
片桐くんは立ち止まったものの振り返る気配は無い。
手首を握っている手はいつの間にか冷たくなっていた。
不思議に思ってひょこっと顔を覗いてみた。
すると片桐くんは顔を真っ赤にして立っていた。
「ど!どうしたの?!」
私が尋ねるとはぁ~と息を吐きながらその場にしゃがみ込んだ。
「ごめん。俺…、
どうすればいいか解かんなくなった…。
図書室ではあんな風に帰ろうって言ったけど
歩いてるうちに凄いことしたなって
なんか思い始めて…恥ずかしくなった。
ごめんな…」
頭をグシャグシャッてしながら言った。
「ううん。帰ろうって言ってくれて嬉しかった。
いつも一人だったから」
そう言って笑って見せた。
少しでも片桐くんが楽になるかなって…
「友達だろ?」
そんな言葉と共に爽やかに笑った。
「あ、俺だけが思ってるのか…」
そしてまた照れくさそうに笑った。
私は勢いよく首を横に振った。
「そんなこと言ってもらえて、
すっごく嬉しいよ!!
やっぱり片桐くんは優しい人だね」
私の言葉に片桐くんはこう返した。
俺が優しく見えるのは碧崎が優しいからだ。
碧崎が優しくしてくれるから、
俺も自然と優しく接するんだ。って
その後、片桐くんが家まで送ってくれて
爽やかな笑顔を残して元来た道を戻っていった。