センセイのチカラ―受験生応援小説―
「萌美、昨日の居残りで黒岩となんかあったん?いじめられたん?」
挙動不審な私に瑠美が顔を寄せながら聞く。
「な、なんもないで」
「嘘や。さっきの態度はどう見てもおかしいで」
「黒岩、どんな顔しとった?」
「めちゃびっくりした顔してたで。でも、その後笑ってたけど」
ちゃんと昨日のお礼言いたかったのに、突然やったから逃げてもーた。
「瑠美、この時期に片思いってどう思う?」
数学の問題を解きながら、前の席の瑠美をつつく。
「へ?」
「受験生は、勉強のこと以外考えたらあかんねんよな」
「何言うてんよ。そんなわけないやん。うちらだって楽しむ権利はある」
瑠美はポケットから好きなアイドルの写真を出して、ニヤリと笑った。
「昼休みに詳しく説明して」
瑠美はそう言って、私の顔をニヤニヤ覗き込んだ。
休み時間は、大勢で過ごすことが多い。
昼休みは時々ふたりで中庭を散歩したり、裏庭のうさぎを見に行ったりする。
受験生やのに、受験生っぽくないところが、私と瑠美は似てる。