センセイのチカラ―受験生応援小説―
「小阪、このテスト、クラスで一番悪い点数やったんやぞ?」
黒岩は、机の上の小テストを手に取り、ため息をついた。
ほんのり、タバコの匂いがした。
運動場から聞こえるサッカー部のボール蹴る音。
陸上部の掛け声も。
「ん~、英語さえ頑張れば、志望校も余裕で合格やねんけどな」
黒岩は、眉を上げながらそう言って、呆れたような表情で私を見た。
その顔が何とも言えん、いい顔で・・・・・・
また惚れてまう。
「これから、英語頑張ろうと思うねん。だから・・・・・・教えてくれる?」
勇気を出して言ってみる。
授業でちゃんと教えてもらってるのに、私だけ特別に教えてもらうなんて無理やんな。
「お前、本気か?やっとやる気になったか?いくらでも教えるに決まってるやろ?受験まであと少しなんやから、俺にできることあったら何でもするで」
あぁ、黒岩。
先生としても、男としても、黒岩ってええやん。
つくづく、なんで今まで気付かんかったんやろう。