センセイのチカラ―受験生応援小説―
放課後の教室は昔から好きやった。
なんか落ち着く。
みんないなくなって、椅子や机が少し寂しそうで。
一番後ろの自分の席に座る。
黒岩に居残りさせられるのは、3年になってから何回目やろう。
一学期は、よく居残りさせられたけど。
机の落書きを見つめてみる。
去年の卒業生が書いたんやろう。
相合い傘。
古っ!
でも、うらやましい。
受験生にとって、好きな人って最大の息抜きやん。
でも、勉強に集中できひんかもしれん。
私には関係ないことや。
机に置いたノートを開く。
気合いの入ってない英語が並ぶ。
「小阪、やっとるか?」
教室に現れた黒岩。
「てか、先生なんでジャージなん?」
「ん?サッカー部の顧問やから。お前、そんなんも知らんのか?」
「知ってるわけないやん。なんで先生がサッカー部の顧問ってこと覚えてやなあかんのよ」
「そりゃそうやけど。そんなに俺に興味ないんかい!」
興味?
先生に?
おっちゃんやん。
しかも、先生やん。
「ごめんやけど、オヤジに興味ないねん」
「お前、きっついなぁ。サッカー部の黒岩って言ったら結構有名やのに」
ふーん。
興味ないし。
「ふーん。じゃあ覚えとくわ」
覚えたところで、もう卒業やん。
この学校とも教室とも、先生ともさよならやん。