センセイのチカラ―受験生応援小説―
「前から気になってたんやけど、お前英語だけやる気ないやろ。他はそこそこやのに、英語だけ平均以下や」
私の前の席に座った黒岩は、いつもとは違う雰囲気。
黒いシャカシャカしたジャージが、無駄に似合ってるのが悔しい。
「なあ、ジャージで授業すれば?」
「俺の話、聞いてる?」
「先生、ジャージの方が若く見えるで」
「俺、まだ若いし」
てっきり30歳越えてると思ってた。
意外に若くてびっくり。
「ジャージ着てたら26に見えるわ。普段はオヤジに見える」
「失礼やな、お前は。そんなことより、お前のやる気のなさが問題やねん」
英語キライ。
日本人やのになんで英語なんかやらなあかんの。
「やっぱり、教師の影響もあるんかな。俺が嫌いやから、英語も嫌いなんか?」
いやいや。
別にそこまで嫌いじゃない。
むしろ、興味ない。
それだけ。
「国語の山本先生は、女子に人気あるからなぁ。だから、お前も頑張れるんかもしれんな」
いや。
違うし。
山本は、人気あるけど、優しすぎて苦手。
黒岩の方がまだマシ。
「おい、小阪。なんとか言えよ。本気で落ち込むやろ、俺」
くくく。
おもろい。
黒岩って、こんなやつやったんや。