センセイのチカラ―受験生応援小説―
「せっかくもうすぐ卒業やのに、学校嫌いにならんとってくれよ」
夕日のせい?
ジャージのせい?
黒岩に
ドキッてしてもーたやん。
「先生だけでもそう思ってくれてるってわかって、安心したわ」
平常心、戻ってこい!!
「俺ら教師だって、ヤイヤイ言うのは辛いんやで。受験のことなんか忘れさせてやりたいなって思うこともある」
だから!!
その顔やめて。
授業中と全然ちゃうやん。
めちゃ優しい顔。
包み込まれるような。
黒岩の胸で、大声で泣きたいような気分になる。
「受験の為に生きてるんやないんやからな。お前がこれから進む未来の為に今だけ、必死になれってこと。今頑張らへんで、いつ頑張るんや」
試験までの時間はわずか。
あと少し。
ラストスパートって、教室の壁にも貼ってある。
あと少しなんやったら、もう少しだけ前向きに受験に向かってみよかな。
「わかった。未来の為の今って思えば頑張ろうかなって思う。てか、先生そういう話、授業でなんで話してくれへんの?」
「せやな。英語教えるより大事かもな。お前のおかげで俺も気付かされたわ。ありがとう」
お、おい。
気軽に触るなぁ!
私の肩に手を乗せて、黒岩は立ち上がった。
「見たいテレビあるんやろ?今日はもう帰れや」
「え?いいん?補習は?」
「基礎はあるからお前なら大丈夫。今日はお前のやる気を確かめたかっただけや」
反則やろ。
なんなんその優しさ。
落ちた。
こんな時期に。
黒岩、あんたのせいやからな。
恋に落ちてもーたやん。
あほ。
黒岩のあほ。
でも、ありがとう。