風になれ
念願だったテニス部に入部してから
私は理想と現実との差に
あちゃーと言わんばかりだった。

センパイはいじわるだし何より下手。
憧れていたいとこたちの姿に
似ているひとなんて皆無だし、

そして何より私自身が下手だった。

入部してから少しして
サーブテストがあった。
これは10球中何本入るかというもの。
キヨちゃんと峯岸さんは
硬式テニスを習っていたみたいで
かなりの高確率だったけど
他の子もみんな5、6本は入った。
けれど私は一人だけ3本。
出来損ないということが
明るみになってしまった瞬間。
あの時の情けなさとやるせなさは
多分一生忘れないだろう。
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