風になれ
「んもう、遅い野風!」

家を出たら優子が自転車にまたがって
すでに待っていた。
幼なじみの私たちは家も近い。

「ごめん、優子!」

私も急いで自転車を出して
優子と会場まで走り始めた。

「…いよいよ今日だね」

朝の爽やかな風を切りながら
優子が言った。

「うん」
「いざとなるとやっぱ緊張だなあ」

あはは、と笑いながら
優子は優子らしくない言葉を口にする。
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