風になれ
臨むところだあああああ!!

せこい手かもと思ったけれど
私は思いきりラケットの面を下に向けて
ネットぎりぎりにボールを落とした。

「くっ!」

霧ヶ窪さんがそれを走ってすくう。
ボールは高く、でも短く
こっちのコートに来た。

「野風!」

後ろから優子の
少しだけ不安そうな声が聞こえてきた。

サーブと同じくらい苦手だけど
でも前衛だからやらなきゃいけない技。
あまりにも出来なすぎて悔しくて
優子にすら見られないように
大地くんと人目につかないよう徹底して
サーブよりも練習してきた技。
昨日も避けてやらなかったから
霧ヶ窪さんも油断していたみたいだけど
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