風になれ
「昨日逃げたからなー。
 ホラ、女ってそーゆーの
 ねちっこいんだろ?
 もし待ち伏せとかされてたら
朝から嫌な思いしたくないっしょ」

どうやら大地くんは
私が出待ちされると思ったらしい。
…まったく考えてなかったぁ。

「んじゃ、行くか」

カップラーメンの汁を飲み干して言う。

「ねぇ…それってまさか…」
「ん?朝メシ」

屈託なく笑う大地くん。

「野風が何時に家出るか、
 知らなかったからさ、張り込んでた。
 …てかんなこといいから早く乗って」

急かされて後ろの荷台に乗ったけど
私は嬉しくて胸がいっぱいになって
涙が出てくるのを堪えきれなかった。

ありがと。

涙まじりの声で小さく言うと
聞かせないつもりで言ったのに
彼は器用に片手を伸ばして
私の頭をくしゃくしゃとなでた。


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