風になれ
「野風!!」

迷っていたら、
客席から大地くんの大きな声がした。

「野風、迷うな!
野風なら出来る、言っただろ!!」

あ…

「あーそうそう、野風、
 あともーいっこね」

練習初日、残ったときに大地くんが
言ってくれた言葉。

風になれ。

「緊張したっていいよ。
変に頭で考えなくていい。
ただイメージすればいいんだ。
風になってボールを飛ばせ。
風に乗せるんじゃなくて風に飛ばせ」

ふっと思い出して大地くんに頷いた。
かましてこい、と力強く
大地くんも頷き返してくる。

これが勝負。
けがの痛みをマトモに考えたら
これ以上試合を伸ばすことなんて無理。

…あ、だめだめ。
考えるんじゃなくて感じるんだ。
ふっと目をつぶって
きゅっとラケットを握り直す。
そして私はボールを手から離した。
風を感じて。
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