風になれ
もしかしたら笑っているかも。
本心じゃないのかも。
今さら何を言ってるんだろう。
立ち去りたい気持ちに駆られた。

けど、私は見てしまった。

頭を下げた副部長の顔から
数滴の滴がこぼれたのを。

「…もう、いいです」

気づいたらそう口にしていた。

「テニス部は私達が頑張るので
 センパイ達は受験頑張ってください。
 …失礼します」

言うだけ言って、私は駆けだした。

…私は自由だ。
もう陰湿ないじめはない。
あのひとたちのことはもう忘れよう。
明るい光の中に踏み込んだ気がして
私は大きく深呼吸をした。
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