風になれ
つられるように私も俯く。
数秒の間をおいて、
2人の笑い声が重なった。

「何お互いの顔隠しあってるんだろ」
「ウケるね。ガラじゃない」

げらげら笑いながら教室に入ると
にっこり笑った伊久ちゃんが
仁王立ちで私達を待ち構えていた。

「おはよう、2人共。
 話があるんだけどちょっと良い?」

なんだろう、と優子と顔を見合わせた。

「テニスやろうよ」

トイレまで呼び出されて
伊久ちゃんに言われた言葉の第一声。
思いがけない言葉に
私たちはぽかんとした。
てっきりなんか怒ってんのかと思った。

「でもさ、今日から部活ないよ」

私の言葉に伊久ちゃんは
ふふんと得意げに鼻をならした。
< 27 / 168 >

この作品をシェア

pagetop