風になれ
伊久ちゃんは声を詰まらせて
南に、あたしに、訴えている。
…てゆーか、南部活やめるの!?

「理由を言ってよ。
 伊久が納得する理由じゃないと
 絶対認めないんだから」

ちょ、伊久ちゃん。
南も突然すぎるけど
アナタもふてぶてしいって。
個人の都合とか…あるっしょ。

「だから理由なんてないって…
 私が…ただやめたいって思ったの。
 ほら、受験だってあるでしょ?
 もう来年じゃん。
 私、難関高校狙ってるから
 部活なんかに時間さいてらんない。
 みんなが真剣ってわかってるから
 今、やめようと」
「南」

いつのまにか私は南を呼んでいた。
泳いでいた南の目が止まる。
少し震えているのが
痛いくらいわかった。
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