風になれ
南が泣き笑いの顔をして
私達から顔を背けた。
伊久ちゃんも私も
何も言うことができなくて
南が口を開くまで待っていた。

「…発見が遅かったんだよね。
 私、みんなよりもサーブ遅いから
 カットサーブ練習してたんだけど
 そのくせが原因だろうって。
 ………なんだろ。
 やっぱ、ちゃんとさ
 打ち方とか、気にしてればよかった。
 変に背伸びなんかしないで
 基礎をしっかりやって。
 でも、それでもさ、…んーと…」

ごまかすかのように
髪をくしゃくしゃしながら南は言ったけど
途中から横顔に
光るものが伝っているのを
彼女は隠しきれなかった。
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