風になれ
「私はやっぱり、
 そんなに上手くないから
 ペアの伊久には
 迷惑かけたくなかったの。
 けどそれで自分で勝手にやって
 それで勝手に怪我して。
 もう2度とテニスは
 出来なくなるみたいだし。
 あーあ、馬鹿だよね。
 これぞ迷惑って感じ。
 だけど、だけどね…」

そこで初めて南は声を詰まらせて、
でもくるりとこっちを向いた。
目をつぶってすぅっと深呼吸する
南が次に目を開けたとき
そこに迷いはなくて
潤んだ瞳で真っ直ぐ私達を見た。

「私は、最後の最後まで
 伊久に迷惑をかけたけど、
 自分勝手だけど」

一呼吸の間。
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