風になれ
「…ったくしょーがねーなー」

どすっと重そうな荷物を投げ出して
大地くんはラケットを出し始めた。

「え、いいよ大地くんまで」
「いーんだよ別に」

私の声を遮って
大地くんはコートに入った。

「俺も野風とペアで勝ちたい。
 理由はそれでいいだろ?」

にひひ、といつもの
彼以外のひとがやると下品な笑い方。
それをいつもどおりかっこよくキメると
早速練習につきあってくれた。

「あーそうそう、野風、
 あともーいっこね」
「ん、何?」

ほんとに良い彼氏をもったなあ。
そう思いながら毎日自主練を続けて
とうとう最終日になった。
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