純愛、こじらせちゃってます。
第4話 人生って理不尽?!
「御手洗」の姓は、両親が離婚する前の私の名前だ。

シャリオの君がその名前を言った時点で、「一生無視」フラグが確定。



間違いない。

こいつは、あの久留生海斗だ。


久留生海斗。


こいつは、私の涙ぐましい小学生時代を台無しにした。


当時、両親の離婚のゴタゴタで私の人生は既にメチャクチャ。


ただでさえイタイ少女時代に、泥塗ってマスタードを塗り込んだのが、このクソ海斗だった。



「やーーーーい!トイレ!トイレ!!」


男子たちの大合唱の中、耳を塞いで教室から駆け去る日々。


私のあだ名は、当時、「御手洗(みたらい)」転じて、トイレだった。


勿論、クソ海斗が付けたあだ名だ。


その上、毎日のようにスカートをめくられた。


屈辱だ。




お父さんは、他に女を作って駆け落ち同然で出て行った。

荒れたお母さんは、月替わりで違う男達を家に引っ張り込んでいた。


「ご存知?奥さん、あの家は……」


残された私達母子は、近所の噂のタネと嘲笑の中にいた。


だからこそ、私は一生懸命、目立たないように気配を消して、息を殺して生活した。


「ふしだらな父親とインランな母親の娘」


周りの大人達が言っている言葉の意味を、小学校に入った頃の私は十分に理解していた。


だから、出来るだけ礼儀正しく、道を踏み外さないように、慎重に慎~~~~~重に生きて来た。


綺麗な言葉遣い。

美しい姿勢。

勤勉で真面目。


つまりいいところお嬢様風をテレビドラマとかで研究し、そんなイメージを自分に課して、血の滲むような努力を重ねて生きていた。


周りのおば様方から少しでもイイ子のイメージを持って貰えるように……。

両親と私は違うんですって、必死にアピりまくってた。


お父さんからの養育費なんて貰えるはずもない中、貯金を切り崩しつつ、お母さんのパートでようやく食い繋いでいた家計は、男に貢ぐお母さんのせいで火の車。

健気な小学6年生の私に負わされていたのは、ランドセルではなく、人生って『理不尽』の楷書体の強調3文字。



そんな時、あの事件が起きた。






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