純愛、こじらせちゃってます。
第5話 パンツの恨みは海よりも深く
思い出したくもないから事件の詳細は書かないでおこう。

ある日、バカ海斗が私のスカートを捲ったら、見えたのはそれはそれはセクシーなスケスケ黒レースの紐パンツだった、それだけの話だ(←貧乏でパンツが買えなくて、お母さんの使ってないのをたまたま借りた)。

でも、いつもと違っていたのは、普段は学校の中で捲っていたのに、その日に限って下校時で、しかも周りにお喋り好きのおばさん達がいっぱいいたこと。


そして、あろうことかバカ海斗が鼻血を噴き出してぶっ倒れて、救急車に運ばれてしまったと言うオプション付き。


もう、目立つ、目立つ。

チョー悪目立ちだ。


(あ、結構詳細を描いちゃったような気がする)


つまり、周りから

「やっぱり、ふしだら男といんらん女の娘ねぇ」

と烙印を押されちゃうと言う私的に人生最大の大事件へと発展した。



人が小学生人生全てを賭けて築いた努力を、たった一日のスカート捲りでパーにしやがった、失礼、しちゃったのが久留生海斗だったのだ。


その私の人生の最悪の凶悪犯が4年経った今、私の目の前にいる。



「一生無視」フラグを3本追加して、四方をがっちり固め確定する。



久留生海斗は差し出した手を払われて、その美しい顔(イケメンになったことは素直に認めよう)が歪んでる。


「触らないで下さい。それから、もう2度と私に声を掛けないで下さい!」


「俺、あの……舞香ちゃんに謝りたくて」


「『舞香ちゃん』なんて、気安く呼ばないで下さい!」


「でも、君、名前変わったって聞いたし、だから『みたらいさん』じゃダメだし、『椎名さん』って呼ぶのもなんか違和感だし……」


「だから、声を掛けなきゃいいじゃないですかっ!」


「そうはいかないよ。バイト中に何て呼べば……」


「『おい』とか、『お前』とかでいいですよ!」


「……それじゃ、定年後の老夫婦みたいだよ」


「と、とにかくっ、『私に寄るな、触るな、近寄るな!』です!」


お互い睨み合うこと数秒。
久留生海斗が視線を落とし、ふーっとため息交じりに頭を掻く。


「……分かった。……けど、なんで俺達タメなのに敬語なの?」


このバカ海斗!

雰囲気読み取れよ。

距離を置こうとしているからに決まっているじゃない!

私の睨みに臆したか彼は後ずさる。


「了解。出来るだけ、君の視界に入らないようにするよ」

久留生海斗は肩を竦めると「じゃ!」と手を振って、待合室から出て行った。


< 5 / 11 >

この作品をシェア

pagetop