純愛、こじらせちゃってます。

第９話 チョコレートバーは試練？！

「いらっしゃーーーい！！」

パン！
パン！
パン！……


玄関に入るとクラッカーで出迎えられる。

中には１０人くらいの男女。

男と女、半々くらい。

女の子の何人かが、恐い顔で私と久留生海斗の繋ぐ手を睨むように見ている。

あ～あ、めんどくさっ！

何でこんな鬼畜男がいいのよ。

こいつに熨斗でもバシッと貼り付けて、『彼女代行』の役を誰かに譲りたいわ！


女の子達の嫉妬の嵐が渦巻く中、表面上、穏やかなパーティーが進行する。


途中分かったことだけど、カップルと言うことで参加しているのは、私達だけだった。


女の子達の熱～～い視線が友達と談笑している久留生海斗に注がれている。


勿論、刺すような悪意に満ちた視線は私に注がれているんだけど……。


ケーキに、ゲームに、そしてプレゼント交換。


プレゼントはビンゴゲームで、上がった人から景品を選ぶことに。


久留生海斗が一番にビンゴ宣言をし、プレゼントの山の中からひとつの箱を手に取る。


「あ！それ！俺からのプレゼントだ！」


手を挙げた一人がニヤニヤ笑う。


「ほらほら、記念写真撮って上げるから彼女さん海斗の隣に並んで」

「いえ、いっ、いいです！」

久留生海斗が『約束は？』とそっと耳打ちして脅迫する。


「……はい、有り難う……ございます」

しぶしぶ彼女役を演じる。

久留生宇海斗の隣にちょこんと座る私の肩に彼の手が回る。

ぞわぁぁぁ～と鳥肌が立ち、今でもこいつを投げ飛ばして帰りたい衝動に駆られるのを必死に我慢。

２人で箱を手にして、ニッコリⅤサイン。


「開けて、開けて！」


周りの声に急かされて、久留生海斗が包みを開ける。


箱？
ずいぶん、カラフルで……。
結構、大きい……。

「２人で使ってよ」と先程の彼。

『恋する２人のあまあまチョコレートバー』（１ケース１２個入り＋増量）と言う字が見える。

「わぁ～！ありがとうございます！チョコレートバー、私、大好きなんです！」

精いっぱい、彼女役を演じる。


でも周りの反応がビミョォ……。


久留生海斗の様子も変。

コホンコホンとしきりに咳払いなんかして。

それに、顔が真っ赤なような気がする。


ちゃんと箱を開けてみて鈍感だった私は初めて赤面する。


「ありがとう。早速、今夜彼女と２人で大事に使わせて貰うから」


久留生海斗は私の肩を抱き寄せ、公衆の面前で私のおでこにチュッとキスをかます！



しかも彼は、しっかりとその箱をカバンに……


し、しまっちゃうんだ、それっ？！