王子な彼の恋は盲目
ピンポーン
まだ朝も早い時間だというのに誰なんだ?
残念ながら私は今手が離せない。
「有斗か有莉出てー!」
「わたし出るよー」
有莉がパタパタと玄関に向かったのを見て、私は掃除機をかける。
「おねーちゃん、ゆうちゃん遅いねー。」
ちなみに有也は私をお姉ちゃんと呼び、有莉をゆうちゃんと呼ぶ。
兄弟全員に「有」がつく我が家は、「ゆう」と呼ぶと全員が振り返ったりする。
「あー、確かに遅いね。有斗見てきて」
「めんどくせー」
ブツブツ言いながらもちゃんと見に行く有斗は、断っても叩かれるだけだとわかっている実に賢い弟である。
掃除機を片付けても二人とも帰ってこないので、少し心配になり玄関へ向かうとざわざわと騒がしかった。
「有莉ちゃん、いい名前だね。雪のように白い肌がとても美しい…」
「あ、あの…」
「ちょ、アンタ何やってんの!?」
なんと玄関前には
長ーい黒塗りの高級車とスーツのお兄さんを従えた橘が妹を口説いていた。