王子な彼の恋は盲目
「おはよう有希、今日も一段と可愛いね」
「いや、可愛いねじゃなくてとりあえず説明しようか?」
私の髪を一束つかんでニコニコしている橘にうっすら殺意が沸く。
「君はもう忘れてしまったのかい?昨日の別れ際に言ったじゃないか、明日の朝迎えに行くと」
仕方ない子だなぁなんて言いながら髪にキスをしたヤツの頭を一回叩いておく。
「お、お姉ちゃん…」
可哀想に怯えてしまっている有莉が私の制服のスカートを引っ張る。
「ごめんね、怖かったでしょ?もう大丈夫だからお家に戻ってなさい」
「ううん、そうじゃなくて…この王子様みたいなお兄さんだぁれ?」
ああ、と手を頭に当てる大げさなポーズをしてからヤツは話し出した。
「僕としたことが自己紹介がまだだったね。はじめましてお嬢さん、僕は橘小太郎、君のお姉さんとお付き合いを…」
「いつ私がお前とお付き合いしたんだよ!?」
再び跪いて妹の手をとる橘から有莉を引き離して、キッと睨み付けた。